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痛みのない虫歯は存在する?痛くない原因と放置してはいけない理由

歯に痛みがないのに虫歯がある、そう歯科医から指摘を受けた経験はありませんか?痛みのイメージが強い虫歯ですが、中には痛みを感じない虫歯も存在します。
今回は虫歯でも痛みを感じない理由や、痛みのない虫歯を放置することの危険性について解説したいと思います。

 

虫歯で歯が痛くなる理由

歯は外側から硬い「エナメル質」、その下にある「象牙質」、さらに歯の神経である「歯髄」の3つの層によって成り立っています。
これらの構造を踏まえ、虫歯で歯が痛む理由を見ていきましょう。

●軽度〜中度の虫歯(C1〜C2)
軽度〜中度の虫歯は、歯の表層であるエナメル質が欠損し、その下にある象牙質が露出、または薄い層でしか守られていない状態となります。
普段エナメル質という硬い層に覆われている象牙質ですが、外部からの刺激が直接加わると痛みが生じてしまいます。これは、象牙質が痛覚を持つ歯髄にまで刺激を伝達するためで、冷たいものがしみる知覚過敏と同様のメカニズムです。
痛みの感じ方はズキズキとしたものではなく、主に冷たいものや甘いものがしみる鋭い痛みが多くなります。

●重度の虫歯(C3)
象牙質のさらに下、歯髄にまで虫歯が到達すると、歯髄が虫歯の細菌感染によって炎症を起こすことから、今までとは比較にならないほどの強い痛みになります。
軽度や中度の虫歯にはない、冷たいものだけでなく熱いものが染みるようになったり、何もしなくても痛みが出る「自発痛」が起こるようになったりするのも特徴です。

 

虫歯なのに歯が痛くない?

●初期の虫歯
軽度〜中度の虫歯の痛みは、露出した象牙質が歯の神経に外からの刺激を伝達してしまうことで起こりますが、初期の虫歯は表面が白濁した状態で止まっていたり、穴が開いていなかったりすることも多くあります。
そのため、エナメル質の欠損がほとんど起こっていない初期虫歯の場合には、痛みを感じることはほとんどありません。

●すでに神経をとった歯の虫歯
神経である歯髄(しずい)は、歯の心臓とも呼ばれている非常に重要な存在で、痛みを感じる箇所でもあります。この神経をすでにとってしまっている歯は、被せ物の中で虫歯が再発して進行しても痛みを感じることがありません。
そのため、強い打撲や虫歯によって神経をとった歯は、無自覚のまま虫歯が進行してしまう可能性があるのです。

●重度に進行して神経が壊死している虫歯
虫歯が歯の神経にまで到達すると、炎症により今までにないほどの痛みが生じます。これをしばらく放置すると痛みはなくなりますが、これは決して虫歯が治ったというわけではありません。
虫歯で激痛が続いた後に痛みが消失するのは、痛みを感じていた神経が壊死するためです。最後の砦である神経が機能しなくなると、歯は崩壊し続けて最終的には根っこのみが残る「残根歯」となってしまいます。

 

痛くないからと虫歯を放置するリスク

●歯の喪失
歯を失ってしまうことは、放置された虫歯で最も起こりやすいリスクになります。歯を失う原因の一位は歯周病ですが、次いで多いのが虫歯による抜歯です。
特に神経が壊死して歯が崩壊した重度の虫歯の場合、修復が困難であるためそのほとんどが抜歯となってしまいます。

●歯を支えている歯槽骨を溶かす
歯の神経にまで炎症が進んだ重度の虫歯は、根尖部(こんせんぶ)と呼ばれる根っこの先端にも炎症を起こすことがあります。このときに生じるのが、歯の周りの組織と歯槽骨の破壊を招く「根尖病巣」です。
根尖病巣はその名の通り根尖部に病巣ができる病変で、炎症により歯槽骨の中で膿の袋ができた状態を言います。ぱっと見ただけではわからず、レントゲン写真で初めて発見されることも多いため、虫歯がここまで進行しないように早めの治療が必要になります。

●隣の歯への感染
虫歯が進行すると神経に感染が起こり、根っこの先端に膿の袋ができてしまいます。
この膿の袋が大きく広がり隣の歯に及ぶことで、細菌が根っこの先端から侵入して「歯髄炎」という炎症を起こしてしまいます。
こうして健康な隣の歯にまで感染を拡大させてしまうことも、虫歯を放置するリスクの一つです。

●歯並び・かみ合わせの悪化
歯が欠けたり崩壊したりすると、歯並びにまで影響を及ぼす可能性があることを知っていますか?
歯はかみ合う歯、隣り合う歯がいることでバランスを保ち、その位置をキープし続けています。この状態から、例えば1本の歯が虫歯によって大きく形を変えてしまうと、かみ合う歯が上に伸びてくる「挺出」や、喪失したスペースに歯が動いて歯並びが乱れる「叢生」が起こることも珍しくはありません。

●顎骨に炎症が生じる
神経を通じて歯を支える歯槽骨にまで感染が進行した場合、重度になると顎の骨にまで炎症を拡大させてしまうことがあります。
感染が大きくなることで発熱や倦怠感など症状も増悪し、お口の中だけではなく全身的な症状を伴う非常に危険な状態です。このような炎症の拡大は免疫力が低い場合に起こりやすいため、持病がある方などは特に虫歯を放置しないよう気をつける必要があります。

 

まとめ

虫歯によって喪失した歯や骨は、二度と元に戻ることはありません。
しかし、治療のタイミングが早ければ早いほど、歯の神経や歯を守れる可能性が高くなります。
虫歯の早期発見・早期治療には、数か月おきの歯科検診が非常に効果的ですので、たかが虫歯と軽視せず定期的な歯科医院の受診を心がけましょう。

 

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