- その他
歯が抜けるのは高齢者だけじゃない?年齢に関係なく起こる歯の喪失の原因
年齢が高くなるにつれて、歯を喪失しやすくなることはよく知られていますが、実は歯が抜けてしまうのは高齢者に限った現象ではありません。
普段何気なく日常生活を送る中にも、歯を失うさまざまな理由があるのです。
今回は、生涯にわたって私たちの生活を支える大切な歯を守れるよう、年齢に関わらず歯が抜けてしまう一般的な原因について解説していきます。
歯周病が原因で歯が抜ける
歯周病は、歯を喪失する原因として最も多い、歯肉とその周囲組織における炎症性の疾患です。進行すると歯を支える骨にまで炎症が波及し、歯の喪失を引き起こす可能性があります。
特に、年齢を重ねるにつれて罹患しやすくなり、40歳以上は約5割以上の方に歯周病の兆候が見られるという調査結果も出ています。
歯周病の始まりは、プラークと(歯垢)と歯石の蓄積です。プラークは歯に付着する細菌叢であり、不適切なブラッシングや食習慣により増殖します。石灰化すると歯石となりますが、こうなると硬く石のようになってしまうため、歯ブラシ等で取り除くことはできません。
歯石はプラークが付着しやすく、細菌が増殖しやすいことから、放置することで歯周病の初期症状である歯肉炎を引き起こします。
この時点では炎症が歯ぐきに限局しているため、骨に影響は起きていません。歯肉の腫れや赤み、出血などが起きる歯肉炎は、進行すると歯ぐきと歯の溝にまで細菌が侵入し「歯周ポケット」を形成します。
歯周ポケット内に細菌が繁殖し、歯ぐきの中でプラークや歯石が形成され始めると、ポケットはさらに深くなり歯周炎が進行します。
ここまで進行してしまうと、ポケット内に存在する歯周病菌を発見した免疫細胞が、菌から歯周組織を守るため、歯を支える骨(歯槽骨)を自ら溶かし始めます。これが歯周病で骨が溶けてしまう原因です。
しかし、歯周病菌から逃れるための防御反応として骨を溶かしても、歯周病菌がポケット内に存在する限りこの現象は止まりません。
歯周病は、治療を受けないとこのように骨が溶け続け、次第に歯を支えきれなくなることで歯が抜け落ちてしまうのです。
虫歯が原因で歯が抜ける
虫歯は、歯周病に次いで2番目に多い歯を失う原因です。歯周病とは違い、子どもから大人まで幅広い世代で発症するリスクがあります。
虫歯の初期段階は、口腔内の細菌が砂糖や炭水化物を分解する際に放出される酸によって、歯の表面を覆うエナメル質が脱灰(溶解)し穴が開いた状態です。
虫歯がエナメル質を通り抜けると、次に象牙質という歯の内部組織が侵食されますが、ここまでの虫歯であれば、歯を喪失するリスクはほとんどありません。
しかし、歯の神経である歯髄にまで虫歯が進行すると、歯髄が感染して炎症を起こし、痛みや腫れが現れることがあります。感染した歯髄は取り除かなければならないため、根っこの治療(根管)が必要です。神経をとることで虫歯の進行は食い止められますが、歯に栄養を供給していた歯髄がなくなることで、神経のある健康な歯と比べると、歯質が弱くなって歯が脆くなってしまいます。
また、ここからさらに虫歯が進行すると、歯の上部が崩れ始め、根っこだけが残った状態になります。この状態まで進行すると、歯を修復して残すことが難しくなるため、歯を抜く以外の選択肢はありません。
その他の歯が抜ける原因
- 外傷や事故
外傷や事故、スポーツ等によって歯に強い衝撃や急激な力が加わると、歯や根っこが折れる「破折」が起きたり、歯がそのまま抜け落ちる「脱臼」が起きたりすることがあります。特に前歯に起きやすく、大人の場合は破折、まだ歯が安定してない子どもは脱臼が多いのが特徴です。
早急な処置により、歯をそのまま残せることもありますが、保存が難しい場合には抜歯や歯の神経の除去が必要になります。
- 口腔内・全身の疾患
あまり知られてはいませんが、口腔内や全身疾患が進行することで、歯が抜け落ちてしまうケースがあります。
例えば、口腔がん(悪性腫瘍)や骨粗鬆症は、進行の程度によって歯が抜けやすくなるという症状が判明しています。中には、歯科医院での検診から、このような重大な疾患を発見できることもあるため、どの年齢層の方もかかりつけの歯医者で定期的に検診を受けることをおすすめします。
- 噛む力が強い
食いしばりの癖があったり、噛む力が非常に強かったりする場合、歯の根っこが割れる「歯根破折」が起こるリスクが高くなります。歯根破折は治療が難しく、ほとんどの場合抜歯となってしまうため、歯の根っこが割れたことでやむを得ず歯を抜いたという方も少なくありません。
まとめ
健康な歯を維持することは、どの年齢層の方にとっても非常に大きな課題です。歯が抜けるリスクは年齢に関わらず存在し、今回お話ししたように歯周病や虫歯だけでなく、外傷や事故、口腔疾患、咬合力などによっても生じる可能性があります。
しかし、多くの場合は適切なセルフケア、定期的な歯科検診、健康的な生活習慣の維持を継続することにより、歯の健康を守って喪失を防ぐことができます。
自宅でのセルフケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケアは、長く健康な歯を保つための重要な鍵です。快適な口腔環境を保つために、毎日のケアを怠らず、歯科医院を定期的に受診しましょう。